つむぎレポート

No.0112014.02.12
税務署への事前照会

野口 健一

相続税の税務調査

国税庁の発表によると平成24年度は、相続税の実地調査件数が2,789件に対してそのうち申告漏れ件数は2,041件で非違率は73.1%なっており、一件あたりの申告漏れ課税価格は2,546万円で依然として他の税目と比較しても高い数字となっております。これは、相続財産を管理していたのが被相続人のみであるケースが多く相続人が全財産を把握することは非常に困難であることと、相続財産の評価が煩雑であることが主な要因として挙げられます。前者のケースにおいては、日頃から財産の管理をきちんとして、特に贈与の手続きは適正に行うように心がけましょう。一方で相続財産の評価は、国税庁から相続税財産評価基本通達によって評価方法が示されていますが、中には具体的な評価方法が明確にならないこともあります。

税務署への事前照会

 それぞれの財産に係る特別な事情により、通達や過去の事例を参考にしても評価方法が明確に定まらない場合には、納税者の同意を得て税務上の取扱いについて事前照会を行うことも一つの方法です。事前照会には、文書回答によるものと口頭回答によるものがあります。文書回答に関しては国税局の審理課からの回答に従って税務処理をすることができますが、すべての事案に対して文書回答手続の対象とされているわけではありません。相続財産の評価や取引価額の算定・妥当性などに関しては文書回答手続の対象外とされています。

従って、個々の財産評価については所轄の税務署へ口頭による照会となります。ここで注意すべき点は、事前照会をして税務職員から指導された回答に従って申告をした場合であっても、税務調査の結果、事前照会に係る回答と異なる指摘がなされる可能性があるということです。

過少申告加算税等や延滞税

事前照会は、納税者サービスの一環として実施しているもので、内容については法的な拘束力はありませんが、税務職員の見解に基づいて申告した納税者にとって何も救済措置がなければ税務行政に対する信頼が得られません。この場合の救済措置として、延滞税及び加算税の免除規定があります。

延滞税については、国税通則法第63条第6項で免除規定が定められていますが、国税通則法の個別通達で税務職員の誤った申告指導(誤指導)に基づいて申告した場合には、「人為による異常な災害又は事故」に該当することから、免除される旨が示されています。

加算税については、国税通則法第65条第4項(過少申告加算税)及び第66条第4項(無申告加算税)で、「正当な理由」があると認められる場合には免除する旨の規定が定められています。この場合における正当な理由があると認められる事実の例示について国税庁の事務運営指針で明記されています。

所得税法については、納税者から十分な資料の提出があったにもかかわらず税務職員の誤指導によって、その指導を信じて誤った申告となった場合には、それが「正当な理由」にあたるものとして明記されております。他方で、法人税法や相続税法についてはそのような記載はありませんが、個人的には所得税法と同様に取り扱われてしかるべきと考えます。